アボッツカーズウェル・オープン・ガーデン Abbotskerswell Gardens(NGS)
ナショナル・ガーデン・スキーム(NGS)のガーデン訪問は今年の旅のテーマの一つだった。オープンの多くは土・日に集中しているが、 今回はダイアモンド・ジュビリーのホリデーと重なったため旅の期間中に訪問地域でオープンのガーデンは24件も見つかった。 内、7つのガーデンをスケジュールして来た。しかし、ロケーション、オープン時間が短いことなどが災いして、予定通りには訪れることができない。 昨日までの5つの予定の内、2つしか訪問できていない。
しかし、それを一気にリカバリーできるのが今日のNGSだ。というのは、アボッツカーズウェル・オープン・ガーデンは
村の8つのガーデン・グループが一斉にオープンするのだ。規模の小さな個人のガーデン(とはいっても、エーカー単位だが)だけに、
マイガーデンや陽だまりでのガーデニングの参考になる点が多いと期待できる。それで入場料(Combined Admission)は£5とお得だ。
村外れにある"Fairfield"というお宅のミニチュア・シェトランドポニーの牧場がオープンガーデンのためのパーキングとして開放されている。
雨の降りしきる中、合羽を着た10人ほどのボランティアがテントの中で待機していて、誘導してくれる。
NGSのオープンガーデンはガーデンのオーナーだけでなく、こうしたボランティアの協力があってこそ成り立つのだ。
日本人の闖入にボランティアの方も興味津々、あれこれ質問が飛んでくる。10ポンドを払い、NGSの黄色いシールと手描きのマップをもらう(写真右)。
地図の裏(イギリスではこちらが表)は例によって文字による"Direction"が記してある。
黄色のシールは本来は衣服の胸などに貼り付け、入場料を支払った証とするのだが、雨で剥がれるといけないので地図に貼り付けた。
1軒目はパーキングの隣の"Fairfield"だ。
取り付け道路の両脇に支柱にロープを張りバラを伝わせる"Rose Ropes"(と呼ぶらしい)が立っている(写真上左)。
それぞれの支柱に12種類のバラが順次咲いていく狙いのようだ。
ハウスの前は壁と生垣で囲われたウォールド・ガーデン(Walled Garden)になっている。入り口から玄関への通路はラベンダーで塞がれそうだ。
晴れていれば足で掻き分けて通るとラベンダーの香りが一層立つことだろう。ラベンダーの後ろはジギタリス、フロックスなどが花盛りだ(写真上左から2枚目)。
芝の中央のバードバスの周りのラベンダーも見事に茂っている(写真上右から2枚目)。
ベランダの前の植栽が素晴らしい(写真上右、下左2枚)。ベランダの屋根には藤が這い、支柱をバラが立ち上がり、ペチュニアのバスケットが吊り下がる。
足元はラムズイヤー、ゲラニウム、リクニスなどの宿根草が飾る。(沢山咲いているピンクの花の名前を知らない)
こんなシチュエーションでアフターヌーン・ティーなどできたら天国だろう(願わくばシャンパン付きで)。
壁際のボーダーはトリトマ、ラミウム、ジギタリス、デルフィニウム 、ルピナス 、シャクヤク、ラムズイヤー、ゲラニウムなど、
さながらオールスターの競演といった華々しさだ(写真下右から2枚目)。
隣のポタジェ(Potager)に通じるアーチのクレマチスも華やかだ(写真下右)。反対側はスイトピーが立ち上がっている。
敷地の南面には植物園(arboretum)と果樹園(orchard)が広がっているが、この雨ではとても歩いて回れない。
このガーデンがまだ6年しか経っていないというのが信じられないほどに充実している。
次のガーデンに向かっていると民家の生垣からエルダーフラワー(西洋ニワトコ)の花が溢れている(写真右)。そういえば、昨日のコッキントンで野生のこの花を
摘んでいる男性がいた。シロップ漬けにしてジュースやソーダ割りにしたり、ハーブティーにしたりするそうだ。
アボッツカーズウェルも昨日のコッキントンやダートマスの項で述べた1086年に発行された"Domesday Book England"という
英国全土の国勢調査書に載っている歴史ある村だ。リンゴ酒(Cider)のリンゴ栽培で栄えた村だという。
2軒目はどうしたことか留守のようだ。先客がいて木戸を開けて中に入り、声を掛けたが返事がない。3軒目に向かうと茅葺の家が現れた。
普通の民家として使われているようだ。ダイアモンド・ジュビリーの飾り付けがされている。見るほうにとってはノスタルジーを誘われ良いものだが、
住んでいる人は色々不便もあるだろう。それでも古いものを大切にするのがイギリス人だ。他でも茅葺屋根の民家が見られた。古い村なのだ。
斜向かいに3軒目の"Abbotsford"がある。
ホームページでは"Georgian farmhouse"と謳っているが、ファームハウスとは思えない端正な佇まいだ。
歩道より1段高い敷地のハウスの前庭は決して大きくはないが、ボーダーとなっており、バラ、アリウム、ユーフォルビア、シャクヤク、ヒューケラなどの
厚い植栽がガーデンを広く見せる(写真上右、下右2枚)。
ハウスの横に回ると、シダ、竹、グラス、パイナップル・フラワーなどの大きなコンテナが並べられたコンテナ・ガーデンがある(写真上左)。
スペースとコンテナの数のバランスが絶妙だ。ついつい沢山置きたくなるものだ。
次のコーナーが"Walled Outdoor Dining and Barbeque Area"と称する部屋だ。炉には赤々と火がくべられ暖かさにホッとする。
そして壁際は前庭と異なる雰囲気のボーダーだ(写真上下左から2枚目)。バラを用いていないことや、エッジが曲線であることにより、
華やかさよりシックな雰囲気をかもし出しているようだ。その中央の芝生のガーデン(写真上右、下中央)には
勝手にミニ・コンテナ・ガーデンとミニ・コニファー・ガーデンと名付けた。このガーデンもまだ4年しか経っていないという。驚きだ。
その斜向かいが5軒目のガーデン"Priors"がある。
フロント・ガーデンの緑の芝生に白樺が印象的だ(写真上左、上右)。お隣は大きな茅葺の家だ。
このガーデンのデザインは芝生の縁に島を作り、樹木や潅木、宿根草を厚く植え込むスタイルだ。大胆な切れ込みを入れることで、
芝のエッジの総延長を長くすることでガーデンに広がりを演出していると見受けた。心憎い。ホームページで"Spot the Space!"と呼ぶのがこれだろう。
また、トピアリーも幾つも見られる。樹木の種類も様々で葉色や形の変化を楽しめる。こちらのガーデナーは奥様のようでゲストの対応に追われている。
ご主人はといえば、自慢のペットの亀を子供のゲストに披露して楽しんでいる。平和だ。
少し西に進み右手の緩やかな上り坂の取り付け道路登っていくと "Briar Cottage"がある。写真上左は上から振り返った眺めだ。 ここもガーデンの一部だ。ガレージの中の受付では家族総出で迎えてくれる。孫娘ほどの小学生がいて、目が合うとはにかんだ顔が可愛い。
ハウスを取り囲むようにガーデンが築かれている。フロント・ガーデンはアヤメや菖蒲のような尖った葉の植物が多い。
ここもバラとジギタリス、ラミウムが満開だ(写真上中2枚)。片隅の像もモダンだ。
かなりの傾斜地にあり、バックヤードへはレンガの通路や石板の階段を登って行く。バックヤードは何段かのテラス状になっていて、
斜面は石が組まれロックガーデンでもある。上から水路が流れ池に流れ込み、池には水生植物が植栽され、緋鯉が泳いでいる。
石組みの一部はアルペン・ガーデンだ(写真下左から2枚目)。コンテナや彫像も効果的に配されている。
周囲は樹木で囲まれ緑豊かで静かだ。晴れていればテラスのベンチで鳥のさえずりを楽しめるだろうに、雨は止みそうにない。
帰り際にオーナー家族にお礼を言うと、少女がプレゼントだといっておずおずと右の絵を差し出した。お礼に成田で求めたあった髪飾りを贈ると笑顔を見せてくれた。
次のガーデンは少々離れたところにある。NGSの道案内は少ない。年に1日か2日のことだから、A4の黄色の用紙に"ngs
garden open for charity"と記されたものが壁に貼り付けてあるだけのところが多い。写真下左のような看板は多くない。
道を尋ねたり、犬の散歩をする人と挨拶を交わしたりしなが、街の裏通りを歩くと人々の生活に触れる思いがする。
オープンガーデンのお宅だけでなく、どのお宅もフロントガーデンが美しい。フロント・ガーデンは街の景観を考慮した社会性を持っているのだ。
(こちらも参照あれ)
写真下左から2枚目のお宅も小さなフロント・ガーデンだが、お手本のように造り込まれたラブリーなガーデンだ。(NGSではない)
このお宅の向かいが6番目のNGSの"8 Court Farm Barns"だ。
小さなフロント・ガーデンに夫人が待ち受けていてガーデンのコンセプトについて話してくれる。ハンギングバスケットやコンテナ、トレリスをうまく使っている。
傾斜を活かした高い壁にこれでもかというほどクライミング性の植物が誘引されている(写真下右)。しかし、これだけ? と思うほど小さなガーデンだ。
その斜向かいに7軒目の"Karibu"がある。
その前にお隣の前庭のオーナメントが気に入った(写真上左)。手押し車の植え込みは何だろうか?
1ヶ月もすれば花で溢れるのだろう。同じく白く塗ったベンチも素朴だ。
ガーデンへはハウスの裏の30ヤードのスロープを登って行く。登りきった先は2階屋の屋根より高い裏山の広場だ。オーナーご夫妻が迎えてくれた。
"Stunning Views"と謳うのに依存はない。教会を含む村の家並み(写真上左から2枚目)、遠くデボンの田園風景(写真下左から2枚目)など素晴らしい景色だ。
階段を下りて屋上に出る(変な表現だが、そうなのだ)。ポット(コンテナ)を駆使した楓・ホスタ・ガーデンが斬新だ(写真下右から2枚目、上右)。
屋根の上にまでポットが置いてある(写真下右)。花はそんなに多くない。花色も抑え気味な植栽が見て取れる。白いクレマチスが印象的だ(写真上右から2枚目、下左、右)。
"Secret Jungle Garden"とも謳っている。裏山の広場に低木や竹を濃密に植栽し、細い通路をめぐらせて、そこここにオーナメントやスカルプチャーなどが 隠されている(写真下5枚)。これらを探して歩き回るのはガーデン歩きの楽しみの一つだ。しかし、雨は上がったものの、細道だから体が木に触れる度に雫が落ちて冷たい。
少し歩いて8軒目の"1 Lakeland"に到着する。 オーナーの夫人が1人、雨後の手入れをしている。挨拶をして記念写真をお願いすると、ご自慢のバラの前でポーズを取ってくれた(写真上右)。
バックヤードに入る。塀際のボーダーガーデンが素晴らしい(写真上左3枚)。樹木(低木)が良い。若葉色の楓、銅葉のセイヨウニワトコともう一つは名前不詳、
コニファー、濃緑のコニファー、ピンクのハクロニシキなど。塀をクライミングするクレマチスが良い。宿根草がまた良い。デルフィニウム、ジギタリス、ルピナス、
アヤメ、ユーフォルビア、ベンケイソウ、ヒューケラ、ゲラ二ウムなどなど素晴らしい。小さいながら金魚が泳ぐ池(Raised Fish Pond)もある。
素敵なバラとクレマチスのアーチ(写真右)を潜ると2つのパティオ(Patio)がある(写真下左2枚)。
このデザイン・植栽には唸らされる。言葉もない。ただ感服あるのみだ。
2つの小屋(Garden Shed)を越えて奥に入るとキッチン・ガーデンだ。多品種の野菜とイチゴを始めベリー類が育てられている。
ワイルドに見えて、実は手入れは万全だ。温室も備えられている。小屋の一つは"Station Master"の看板がある。鉄道模型があるらしいが鍵が閉まっている。
そして、小屋の樋は容器に繋がっている。雨水を溜め、灌水用にするのだ。エコロジーにも配慮されている。
Address | Abbotskerswell, Devon, TQ12 5PN |
Telephone | 01626 356004 |
Web Site | Abbotskerswell Gardens(NGS) |
オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは
Gardens Finder
Gardens Guideで確認ください。
「旅行記」もご覧ください。